<肺炎>
日本人の死因の第3位にあたるのが肺炎です。そのうち90%を占めるのが、65歳以上の高齢者です。
肺炎球菌は肺炎の原因菌として最も多い細菌です。肺炎にかかっても、たいていは適切な治療によって治癒しますが、入院や自宅安静によって日常生活動作が低下して、介護を要する状態に陥る可能性が高まります。
時に、全身に肺炎球菌が拡散する致死的な侵襲性肺炎球菌感染症にいたることもあり、このピークは5歳未満の小児と65歳以上の高齢者にあります。
ワクチンの接種による予防は、小児だけではなく高齢者の健康維持にとても重要だと考えられます。
肺炎は、風邪・インフルエンザをきっかけとして合併することも多いため、インフルエンザワクチンと肺炎球菌ワクチンの両方を接種されることをおすすめします。
<肺炎球菌ワクチン>
当院では3種類のワクチンを取り扱っております。
①23価肺炎球菌ワクチン(PPSV23 ニューモバックス)
カバー率(65才以上):71.9 %
定期接種対象者:65才の方、60-65才未満で、心臓・腎臓・呼吸器の障害や免疫機能障害のある方
再接種:5年ごと
自費料金(定期接種以外の場合):8,000円
②15価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV15 バクニュバンス)
定期接種の対象者:対象年齢の小児 (生後2ヶ月から5才まで)
再接種:不要
自費料金(定期接種以外の場合):13,200円
③20価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV20 プレベナー20)
カバー率(65才以上):76.4%
定期接種の対象者:対象年齢の小児 (生後2ヶ月から5才まで)
再接種:不要
自費料金(定期接種以外の場合):13,200円
<肺炎球菌ワクチンを接種したほうが良い方>
1)心・呼吸器の慢性疾患、腎不全、肝機能障害、糖尿病のある方。タバコを吸う方。
2)高齢者(特に65歳以上)
3)免疫抑制作用を有する治療(例えばリウマチの治療)が予定されている方。免疫が低下している方。
4)脾臓を摘出された/今後、摘出予定の方。
<PCV15-PPSV23連続接種>
ハイリスク者に望ましい接種方法です。
ハイリスクの病態:
糖尿病、慢性の肺・心・肝・腎疾患、アルコール依存、がん、透析、自己免疫生疾患、脾臓摘出後、免疫抑制剤やステロイド内服中。
PCV15を接種するとメモリーB細胞が誘導され、その後のPPSV23接種でブースター効果(抗体をつくる効果が増強)が期待できます。
PCV15とPPSV23の接種間隔は1年から4年以内が推奨されています。
アメリカCDC(米国疾病予防管理センター)は65才以上の全ての成人とPCV未接種の19-64才の慢性疾患のある成人に、この連続接種を推奨しています。
PPSV23接種後のPCV15接種は、このような免疫応答は得られませんが、1年あければ問題はありません。
①65才の方、60-65才未満で日常生活が極度に制限される程度の基礎疾患を有する方
PPSV23を定期接種、その後は、5年以上の間隔でPPSV23再接種、または1年以上の間隔でPCV20の接種、あるいは、PCV15-PPSV23の連続接種。
②66才以上の方
PPSV23またはPCV20の接種、あるいはPCV15-PPSV23の連続接種。
ハイリスク方は、PCV20の接種or PCV15-PPSV23の連続接種が望ましい。
③PPSV23既接種者
5年以上の間隔をおいてPPSV23再接種、あるいは
PPSV23接種後1年以上の間隔においてPCV20の接種、あるいはPCV15-PPSV23の連続接種をする(この場合もPPSV23同士の間隔は5年以上)。
<最後に>
時に致死的となる肺炎球菌感染症。
しかし、ワクチンを上手に活用すれば、回避できる可能性が高い感染症でもあります。
肺炎球菌ワクチン接種をご希望の方は、一度スタッフにご相談ください。